確かな技術で、インフラの長寿命化を支える。
日本の橋梁やトンネル等のインフラ施設は、高度経済成長期に整備されたものが多く、今後急速な老朽化による事故が懸念されています。
老朽化の原因は、構造形式・周辺環境などさまざまですが、人間の健康管理と同様に、日々のメンテナンスと定期的な点検が必要不可欠です。
インフラ長寿命化社会を維持し、安全で円滑な交通の確保、沿道や第三者への被害防止を図るために、弊社では土木設計技術を応用して長寿命化計画・点検・設計・長寿命化計画を行っています。
長寿命化計画
「国民の安全・安心の確保」「持続可能な地域社会の形成」「経済成長の実現」という役割を担っているインフラは、自然災害が近年に激甚化・頻発化している中で、整備したインフラが事前防災として大きな効果を発揮できるよう、平時から適切なインフラメンテナンスを実施することが必要です。
弊社では、土木構造物である橋梁、公園等の各個別施設計画のほか、市営住宅、学校施設等の公共施設等総合管理計画の個別施設計画の策定支援を実施しています。
学校施設長寿命化計画
ある市では、築30年以上の建物が過半数を占めており、大規模改修に多額の費用がかかることが予想されています。そこで、整備・維持管理コストの縮減・平準化を図るため、中長期的な視点から学校施設の整備の方針を示すことを目的として、小・中学校などの計16施設についての計画策定を行いました。
子供たちが一日の大半を過ごす学校ですが、教育の場としての機能だけでなく、地域の交流や災害時の避難場所としての機能を持っています。本業務では、安全性だけでなく、快適性・学習環境向上・地域のコミュニティ拠点などの観点から、整備の方針・計画を検討しました。
また、優先順位が高い施設をモデル校舎とし、ドローン撮影画像をベースとしたパースを作成しました。ドローン撮影画像やパースは、カルテ等の記録や住民説明用資料としてお使いいただけます。
【老朽化状況の調査】
【築年別の学校施設等整備状況】
【教室内イメージパース】
【ドローン撮影データから作成した校舎のパース】
公園施設長寿命化計画
計画立案後、5年が経過した市において、計画的な維持管理、安全・安心な公園施設の利用、効果的な維持管理や修繕・更新計画を推進するため、全体計画の見直しを実施しました。
老朽化が進む公園施設の現状や日常管理の中で公園の利用状況や利用者のニーズを把握し、計画の対象とすべき施設の定義付けを行ったうえで、予防保全型管理の候補について健全度調査を実施し、判定結果から公園施設長寿命化計画の策定を実施しました。
本業務で作成した健全度調査票は、都市公園台帳として活用し、維持管理しやすいよう施設位置図も作成しました。
- 施設番号:27
- 施設種類:遊戯施設
- 施設名称:複合遊具(大)
- 管理類型:予防保全型
- 損傷劣化:別途健全度調査表参照

国土交通省 公園施設長寿命化計画策定指針(案)(改訂版)より
https://www.mlit.go.jp/common/001259048.pdf
公共施設等総合管理計画
高度成長期に整備した多くの施設が、大規模修繕や建替えといった更新時期を迎えることになり、その経費は大きな財政負担となることが予想されます。そこで、施設の状況や利用・運営状況、事業コストなど保有する公共施設の実態を把握及び分析し、将来推計人口や土砂災害警戒区域マップ等の防災面を含め全市的かつ総合的な視点から計画を策定します。
公営施設複合化
老朽化し機能低下が見られる公共施設を統廃合し、ニーズを考慮し1つの施設で目的を完結できるコア施設として運営する。また民間活用も含め、運営の効率化やコスト低減も図る。
公営住宅の統廃合、新機能の導入
老朽化し機能低下がみられる公営住宅を統廃合し、多世代交流が可能なコミュニティ施設や、高齢者向けサービスを整備した新機能付きの公営住宅として運用。また運営には民間も含め、住宅機能の向上を図る。
点検
維持管理の重要性については、平成24年の笹子トンネル天井板崩落事故から道路構造物の点検の必要性が叫ばれています。
弊社では、事故以前よりインフラ維持管理の重要性に着目し、点検の実績を積んでまいりました。
現在では、道路橋のみならず、トンネル、標識、横断歩道橋、擁壁や河川施設など様々なインフラの点検を実施してきました。また、近年ではドローン(UAV)などを使用した点検にも実施注力し、新技術を用いた点検方法に積極的に取り組んでおります。
橋梁点検
橋梁の長寿命化修繕計画において、基礎情報を得るために橋梁の点検を行いました。点検対象となる橋梁はトラス構造で鋼材間隔が狭く、4車線道路で桁幅も広かったため、橋梁点検車から吊り足場を設置しての近接目視による点検方法を提案し点検を行いました。
また、UAVとAIを組み合わせた点検方法も行っています。
橋梁点検の作業補助として、UAVで取得した画像と橋梁点検車から撮影した近接写真との比較を行い、また、AIによる画像解析と通常の点検方法により抽出された損傷を比較し、これらの比較検証結果と合わせて調査結果を報告書に取りまとめました。
弊社では、UAV、橋梁点検車、はしご、吊り足場、調査船、ロープアクセスなど点検箇所に合わせた作業方法で効率的かつ安全に行うことができるよう点検方法をご提案します。
【吊り足場による点検風景】
【高所作業車による点検風景】
【UAVによる橋梁点検】
【橋梁を撮影するドローン】
トンネル点検
トンネルは、近接目視とハンマーによる打音検査で点検を行います。目視点検では、ひび割れや変色、漏水の確認を、打音点検では、コンクリートの浮きや空洞が無いかを確認します。損傷を確認した箇所には、チョークで印を付け、図面に位置と損傷の状態を記入していきます。
なお、写真のトンネルは、完成したばかりで日が浅く、一般車はまだ通行できない状態のもの。橋梁やトンネルの点検作業は、古くなった構造物だけでなく、出来たばかりのものも対象になります。初期状態がどのような状態だったかを記録しておくのは、アセットマネジメントを行う上で大切なことです。
【高所作業車によるトンネル点検】
標識・照明灯等の点検
道路標識、道路照明施設の点検は、突然の落下や倒壊等の事故を防止するため、変状を早期に発見することを目的として行われるものです。
ある業務では、道路案内標識152箇所について健全性の点検を行いました。点検は近接目視を基本としますが、路面境界部がアスファルト・土砂等で覆われていたため、路面をはつり、腐食が生じていないか調査しました。また、ナットのゆるみ等の異常を把握した場合には、締め直し等の応急措置を行いました。
【高所作業車による標識点検】
写真の照明灯点検では、点検に先立ち市道の現地調査を実施しました。その結果、交通量の多い路線を優先し、点検を行う照明灯205基を決定しました。標識点検と同じく、近接目視により亀裂・腐食・塗料の浮きなどを調査します。
【道路照明灯点検】
現地での点検後は、損傷の有無等により判定を行い、点検記録票を作成します。
点検記録票に合わせて施設台帳を作成する際は、地図情報システムで表示・検索が可能なデータ形式にすることにより、今後の管理に活用して頂くことができます。弊社では、安全な道路交通を確保し、効率的な道路管理に役立てて頂けるよう、変状の確実な発見と汎用性の高いデータ作成に取り組んでいます。
【GISによる台帳管理システム】
河川管理施設点検
河川管理施設の点検は、河川管理施設である護岸堤防等を適切に維持管理するため、堤防等の状態を点検・把握するとともに、その結果を今後の河川管理施設の維持管理に活用していくことを目的に行われるものです。治水・利水・環境保全に係わる機能に影響を及ぼす堤防等の河川管理施設の変状は、様々な要因により生じ、時期的、場所的な現れ方も多様です。そのため定期的に、あるいは出水や地震等の大きな外力の作用後に点検し、機能状態を評価して必要な対策を実施する必要があります。
ある業務では、堤防・護岸等計18河川(約32.0km)、樋門・水門等計5施設について点検を行いました。点検計画書を作成したうえで、徒歩による目視点検により、変状・変化の発見・観察を行い、詳細点検あるいは補修等の適切な対策の判断の前提となる点検結果の評価を作成し、報告書に取りまとめました。また、変状・変化が著しく、補修等が必要であると評価された箇所については、概算工事費を算出して、今後の維持管理に活用できるように対応させていただきました。
【フロート台船による河川施設点検】
【点検準備風景】
補修設計
橋梁補修設計
全国の橋梁の数は約70万、このうち、建設後50年を超えた2m以上の橋梁の割合は2023年に約43%、2033年に約67%にのぼります。昨今では老朽化による事故が不安視されており、早急に対応する必要があります。
弊社には技術士([建設部門]鋼構造及びコンクリート)、道路橋点検士、コンクリート診断士が多数在籍しており、橋梁修繕計画の策定・橋梁補修設計の最適なご提案をいたします。
【橋梁補修のための近接目視点検】
例えば、昭和6年に架けられた全長約35mの橋梁の補修においては、まず橋梁全体について鉄筋およびコンクリート、鋼材、伸縮装置、舗装等の調査・測定を行い、劣化の原因や健全度について評価しました。
その後、それに基づき、補修・補強の要否の判定及び対策等を立案し、対策工事に必要な詳細設計を行うとともに、概算工事費を算出しました。
施工後80年以上が経過し、設計図が無いため、床版の配筋位置を探査して、鉄筋を切らないようにコアを採取しました。
支承部は特に損傷(腐食)が激しかったため、ベント支保工により上部工を固定した状態で支承の取替え工を採用しました。
【コア採取の様子】
【支承の取替え工実施】